受付時間 / 午前 9:00-12:00 午後 14:30-17:30
 休診日 / 土曜午後・日曜・祝日 (急患は随時受付)
MENU

お知らせ

「認知症の方に対dするリハビリテーションの考え方」

4月の「医療と介護の未来塾」も、なるコミにて会場およびZoomのハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「認知症の方に対するリハビリテーションの考え方」で、講師は嵜山 泰志先生((株)ともにあゆむ 代表取締役)(以下、嵜山先生)でした。今月参加者は、Zoom参加者:10名(最大)・なるコミ聴講:28名の合計38名でした。
ご参加いただきました皆さま、有難うございました。  

 テーマ別に、1.認知症施策推進大綱、2.パーソンセンタードケア・ともにあゆむケア、3.リハビリテーションデイサービス紀のいえの活動について話されました。
1.認知症施策推進大綱は、(1)普及啓発・本人発信支援 (2)予防 (3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援等を柱とした2019年の施策であります。2024年には、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができる「認知症基本法」が2024年に施行されていますと紹介していただきました。嵜山先生より、(2)予防について運動や食生活、社会との孤立対策が大切であり、和歌山市では自治会単位のつれもて健康体操を利用することも予防につながるとのことでした。(3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援については、認知症疾患医療センターとの連携による早期の支援、研修による医療従事者等の認知症対応力向上、BPSDに対し非薬物的介入の実施、様々な介護サービスや認知症カフェを利用することで介護者の負担軽減に努めることを示されました。非薬物介入として、排泄支援で介入された高齢男性のケースとして、財布がない等の物盗られ妄想が出現したが、日光浴の快刺激を行うことで妄想発言もなくなった例を紹介していただきました。
 2.パーソンセンタードケアとは、性格、生活歴、社会心理(人間関係)等のその人自身に着目した考え方で、嵜山先生も推奨されており、人生の歩みの中で築かれた価値観等をみるようにしていますとの話がありました。松下 太氏(作業療法士)の認知症の人が心理的に求めているものとして、(1)くつろぎ(やすらぎ、なぐさめ)、(2) 自分らしさ、(3) 愛着・結びつき、(4)たずさわること、(5)共にあることをイラストで示してくださいました。
(1)は、不安や混乱、焦りや苛立ちから解放され、心身ともに ゆったりしている状態。
(2)は、その人の人生史や生活習慣に目を向けて、本人なりの暮らし方を尊重すること。
(3)は、これでないと駄目というような好きなもの。家族や友人、親しい人との結びつき。
(4)は、「できること」や「昔取った杵柄」など、誰かの役に立ちたいという願い。
(5)は、本人がいるということが、当たり前であるという状態。
嵜山先生の、ともにあゆむケアでは、先述した日光浴の高齢者のように、BPSDのある高齢者に対し、その方の生活歴や趣味等に目を向けながら、まずは非薬物療法での作業療法などを用いて介護職員共々認知症ケアに取り組んでいるとのお話がありました。
 3.リハビリテーションデイサービス紀のいえ(以下、紀のいえ)の活動についてご紹介していただきました。紀のいえでは、利用者をメンバーと呼び、職員と対等の立場で生活し、役割や生きがいを持つようにしています。認知症や後遺症があるので「危ないからダメはなし」を目標に、包丁での調理、食器洗い、洗濯干し、掃除等の用事を一緒に行い、お互い様の気持ちで共同生活をめざしています。帰宅願望のある認知症の方にも、職員の子供の面倒をみてもらい役に立てていると感じてもらうようにしていますとの紹介がありました。また、紀のいえ利用中の方が入院した際は、BPSDによる食事拒否の対応の仕方など、病院との情報共有の連携を図ることで、食事量が増し早期退院に繋がったこともありました。
他にも、社会参加支援として、地域の子どもの登下校の見守り隊、保育園児に対しのピアノ演奏、地域の資源ごみ捨て、外出先でのメンバー同士でのケア等一緒にできる範囲の役割を持ってもらっているそうです。
紀のいえ併設のTonari caféでは、2か月に1回のオレンジカフェを開催しています。認知症をもつ方の家族を対象としており、日頃からの思いや情報交換などピアカウンセリングとして運営していますとの話がありました。嵜山先生より、あるご家族様(了承済み)からいただいた感想と写真を紹介していただきました。息子さまの感想として、今まで、体当たりで介護を行ってきましたが、何が当り前で指標もない中、常に手探りで常に不安でした。母親が朝と昼で人間性が変わるのは、自分の家だけなのか?自分の接し方や態度が合っているのか?日頃の苦労話など人と話をしたかった。このオレンジカフェに参加することで、自分の悩みを人に聞いてもらえたり、アドバイスを頂けたりと可能性が開けましたとの感想がかかれていました。他の家族様からも「家族同士の苦労の共有ができてよかった」、「皆さんと会話ができストレスの発散になった」等の意見が寄せられているそうです。
最後に、嵜山先生よりTonari caféや紀のいえを通じて、認知症や難病、後遺症がありながらも住み慣れた自宅でできるだけ永くいきいき幸せに生活できるよう共に歩んでいきたいとの話がありました。

 最近は、認知症や様々な病気や障害に目を向けるのではなく、その人をみて、価値観等を知って支援することが当り前になってきています。以前に、テレビで認知症の方同士が、中古車販売の車の洗車や事務、食堂のホール等働いている姿を取り上げていたことを思いだしました。働いた対価をもらうことだけが目的ではなく、社会や仲間とのつながりを重要視しているそうです。国の認知症施策推進大綱での(2)予防の中にも、社会参加による孤立解消や役割保持が効果的と明記されています。紀のいえデイサービスのように、社会参加により活動できるような場所が今後も増えていければと思いました。
 嵜山先生、貴重なご講義ありがとうございました。
 ご参加された皆様、遅くまでお疲れさまでございました。
ページ上部へ