2024年最後となる11月の「医療と介護の未来塾」も、なるコミにて会場もしくは、Zoom形式のハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「シニアが輝くプラチナ社会」で、講師は松田 智生先生(三菱総合研究所 主席研究員)(以下、松田先生)でした。今月参加者は、Zoom参加者:15名(最大)・なるコミ聴講:32名の合計47名でした。
ご参加いただきました皆さま、有難うございました。
松田先生より、日本の高齢化率が世界一で約30%であるが、決して悲観的なことではありません。数十年前とは違い、現在、来日した外国人が一番驚くことは町中にアクティブな高齢者が多いことであります。高齢者は、社会のコストではなく経験を積み重ねた担い手であります、活力ある高齢社会は、錆びない上質な輝きを放っているプラチナのような社会(以下、プラチナ社会)であり、多世代のための成熟した社会でもありますと話されました。また、世界からも日本のプラチナ社会が注目され、オーストリアのメディアもラジオ体操を取材され、「高齢者は重荷でなく「宝」、日本は高齢社会を再定義する」との見出しをつけ紹介されたこともありますとのことでした。75歳以上(男女の夫婦、独居)300名の5年間の死亡率・機能低下率継続調査(国際長寿センター 平成20年度高齢者日常生活継続調査)を示され、独居における死亡率・機能低下率が高く、孤独が社会の課題になっていることが理解できました。松田先生より、多世代コミュニティとして取り組まれているプラチナ社会の国内、海外の好事例を紹介していただきました。
国内のプラチナ社会好事例として
① シニアのゲストティーチャー
地元の小学校より、地域の高齢者から街の歴史を学ぶ総合学習講師の依頼があり、妻との死別後独居生活であった男性が東京大空襲についての講義を行いました。小学生の子供達から「ありがとう」と言われる実感から段々元気になってきました。その後、デジカメ、パソコンを購入し、高齢者同士で街の郷土史を出版していくようになりました。
② 桜美林ガーデンヒルズ
桜美林大学が、高齢者住宅と大学生寮・子育て世代の一般住宅を敷地内につくり、大学の福祉やダンスの授業、子育てを、高齢者と大学生が一緒におこなう多世代で支え合う仕組みとなっています。
③ 和太鼓による社会参加(エクサドン)
日本古来からの太鼓という伝統芸能を使い、地域の方々の社会参加と介護・認知症予防を行っています。楽譜を読む必要もないため、簡単に取り組むことができます。高齢者や障害者など体重・体系・体力に関係なく誰でも楽しく参加でます。引っ込む事案であった高齢者が積極的に参加するようになり、両手が不自由な方も両手を使うことでリハビリにもなっています。
海外のプラチナ社会好事例として
④ フランスの世代間同居
2003年の猛暑で死亡した1.5万人の殆どが独居老人でありました。政府が示した「ひとつ屋根・ふたつ世代」政策により、約3,500組の独居老人と学生の同居が成立しました。一例で72歳女性と音大生の同居では、料理好きなシニアが夕食を作り、週6日一緒に夕食をすることで学生の家賃は無料になります。シニアが献立を考えることが認知症予防にも繋がります。また学生も家庭的な暮らしに出会え、 行政側も高齢者の見守りコストの低減となりました。
⑤ イタリアの音楽家の多世代コミュニティ
カーサ・ヴェルディ 音楽家のヴェルディが設立した、シニア70名と音大生18名が居住する多世代コミュニティの事例です。入居条件は、貧富や名声に関係なく「音楽家」であることです。認知症でも車いすの方でも、最期まで音楽という共通の価値観で住み続けることができる安心感があります。またシニアは、音大生のアドバイザーになったり、一緒に音楽を演奏したりすることもあります。
松田先生が考えるプラチナ社会に向けたアイディア・制度設計案とし、ⓐ:50時間学びや地域貢献が5万円の地域通貨、将来の50時間の介護に適用となるポイント制度、ⓑ:60歳でもう一度学校で学ばねばならない第二義務教育制度を紹介していただきました。また東京や大阪から地域に出向き地域の魅力を知り・学ぶ、Ⓒ:逆参勤交代制度も松田先生が推奨していますとのことでした。実際の高知県須崎市の動画を用いて分かりやすく説明していただきました。逆参勤交代を行うことで、地方で学び、地方に人が流れ、地方に住宅やオフィス整備ができるいわゆる多世代コミュニティとなると考えていますと話されました。
最後に、松田先生よりプラチナ社会は多世代コミュニティであり、機能面として「居場所」、「役割」、「生きがい」、「健康」があります。今回の勉強会を通じて、縁×運×恩を大切にし和歌山市で逆参勤交代を行える一歩踏み出す勇気にしていただきたいですとのお話がありました。
今回の勉強会を学ぶ中で、私は、神戸市長田区の下町エリアにある、多世代型介護付きシェアハウス「はっぴーの家ろっけん」(以下、ろっけん)を思い出しました。サービス付き高齢者向け住宅のろっけんは、神戸下町だから出来ているのか分かりませんが、地元の小学生や地域の外国人が立ち寄る施設です。小学生は宿題を見てもらったり、外国人はパーティーを一緒にしたりとまさに今回の多世代コミュニティであります。
大きな地域社会でプラチナ社会と考えた時、大型スーパーイオン・クリニック・和歌山大学・高齢者住宅・和歌山大学前駅等がある、ふじと台が対象なのではと思いました。桜美林ガーデンヒルズに医療を併合した地域になっていると感じています。同様の考えで当院の宮地区も、スーパーラムー・クリニック・病院・宮小学校・高齢者住宅・神前駅・健康とコミュニティを支援する「なるコミ」等、大きな見方でのプラチナ社会になるのではと思われます。どこの地区でも問題になっている送迎の問題を解決できれば、自身の住み慣れた我が家で最期まで自分らしく暮らせ、行動範囲や人々のゆるい繋がりも広がりを見せ、和歌山市のプラチナ社会発展の切っ掛け作りとなってほしい思いました。
松田先生、遅くまで貴重なお話ありがとうございました。
ご興味あれば、下記に「多世代型介護付きシェアハウス「はっぴーの家ろっけん」についてのリンク貼っておきます。
(参考までに)
https://ashitanochintaipj.com/project/detail.html?id=dcz8l155c_4