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お知らせ

「災害時における高齢者の食事と日頃からの備え」 ~家庭にある食材を使って(調理実習を含む)~

 8月の「医療と介護の未来塾」も、なるコミにて会場もしくは、Zoom形式のハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「災害時における高齢者の食事と日頃からの備え」~家庭にある食材を使って(調理実習を含む)~」で、講師は伊藤 智子 先生(わかやま栄養ケアステーション すみれ 管理栄養士)(以下、伊藤先生)でした。今月参加者は、Zoom参加者:9名(最大)・なるコミ聴講:19名の合計29名でした。ご参加いただきました皆さま、有難うございました。  

 伊藤先生より、「JDA-DAT」について説明していただきました。「JDA-DAT」とは、日本栄養士会災害支援チームのことで、東日本大震災をきっかけに、大規模自然災害発生時、迅速に、被災地での栄養・食生活支援活動を行うために、2012年に設立されたそうです。熊本地震や、能登半島地震で駆け付けた写真を紹介していただきました。活動として、栄養士会のブースを立ち上げ、栄養相談コーナーやカップ麺等での減塩方法の指導、また、キッチンカー(栄養指導車)を走らせ、簡易的な調理のほか、栄養指導を行っていましたとの説明がありました。
伊藤先生より、災害対策に非常食として、アルファ化米、乾パン、クラッカー、水…が挙げられますが、災害時に食事として摂るということを、実感として想像できていない人が大半であり、飽きや栄養が摂れていない点が問題でありますとの話がありました。各災害における総死亡者数と内訳のデーターを示され、関連死の割合災害死として、阪神淡路大震災では14%、東日本大震災では19%、熊本地震では約80%(219人)と直接死のなんと4倍にも至っていたことが理解できました。熊本地震において関連死の多い理由としては、2度の大地震により、高齢者等の要配慮者の方が、避難所など慣れない環境の中で長期間の避難生活を強いられたことによる肉体的・精神的負担であると考えられていますとのことでした。栄養バランスが偏ることのリスクとして、疲労感、食欲減退、不眠、下痢、便秘、免疫力低下による易感染、心身のストレス増大を挙げられ、災害時であっても栄養をバランスよくとることで、災害関連死のリスクや福祉的・保健的な要配慮者の減少に繋がると考えていますとの説明がありました。災害時の食事のポイントとして、①普段の食事に近い状態にすること、②好きなもの、温かいものなど、ホッとできるものをとりいれる、③最低でも1週間分は自力(食べて)いける食品を備える(要配慮者は最低2週間分)が大切であると話されました。
 備蓄方法として、ⓐ家庭備蓄、ⓑローリングストック©パッククッキングの3本柱、さらに、避難場所とそのルートの検索、防災情報の自動配信、家族が避難した場所が確認可能、備蓄品の品目・数量を人数構成と備蓄日数に応じて計算してくれる災害時に役立つ「和歌山県防災ナビ」アプリをご紹介していただきました。ⓐ家庭備蓄として、熱源(マッチ・ライター)・調理器具(ハサミ・カッター等)・食器、食料では、発災後の混乱した状況でも、簡単に開けるだけ、お湯を沸かすなどの簡単な調理のもの、食べ慣れた扱いなれたものを挙げられ、また、お金をかけずに、家庭にある缶詰、レトルト食品、カップ麺などで、主食+主菜(+副菜)となる組み合わせを考え、不足しているものを買い足すようにしてもらいたいとの説明がありました。ⓑローリングストックでは、家族が3日間以上食べられるだけの分を備え、賞味期限の古いものから食べていき、消費したものを買い足していく循環備蓄であり、ポイントとして食べ飲み慣れたもの、常温で保存できるもの、長期保存できるもの、普段の食事にも使えるもの、好きなもの、嗜好品を入れておくと実施しやすいです。伊藤先生は、大好きなビスコを食料備蓄としておいていると話されました。災害時要配慮者として、child(子供)、handicapped(障害者)、elderly people(高齢者)、chronically ill(慢性疾患(透析・糖尿病等))、tourist(旅行者(言葉の通じない人))、pregnant(妊婦)の頭文字でCHECTP(チェクトピ)といい、そのような人達の準備をより重点的にすることが重要であります。また、和歌山県の災害計画において、アレルギー把握と明記されているが、実際、和歌山市の食料備蓄として、アルファ化米、粉ミルクなどであり、災害時にはパン・おにぎり・お弁当等が支給されると考えられます。自身のアレルギーや高齢等で摂取困難な方は、普段の食べ慣れている食事を2週間分程度準備することが望ましいです。農林水産省からも、災害時のための食品ストックガイド(一般用・要配慮者)を提示してくれており、ダウンロードしてほしいです。さらに、特殊栄養食品ステーションの紹介として、東日本大震災をきっかけに発足し、日本栄養士会が避難所等で普通の食事が食べられない要配慮者に対し、特殊栄養食品(アレルギー食品・栄養剤他)を避難所に届ける支援を行っていますとの説明がありました。©パッククッキングとして、ポリ(高密度ポリエチレン)袋に食材を入れて湯せんで火を通す調理法を用いて、実際に調理実習を行っていただきました。ガスや水道、電気などのライフラインが使えなくなっても、カセットコンロ、鍋、水、ポリ袋を準備で簡単な食事を作って食べることができ、今回は、ご飯、切り干し大根とツナの煮物、プリンを作っていただきました。メリットは、ポリ袋の中で調理するので、栄養素や旨味を逃がさない、一つの鍋で同時に何品も調理できる、袋が器替わりにもなり食器が汚れない、ポリにマークを付けることで個別対応が可能(軟らかい食事、アレルギー対応等)であることが挙げられました。出来上がりを、会場参加の皆様に試食していただき、特にプリンが「あまりにも美味しい」と高評価いただきました。アルファ化米のアレンジとして、野菜ジュースで戻す備蓄食品活用レシピも紹介していただきました。アルファ化米を戻す水がないときに、不足しがちな野菜がとれる、ジュースの風味が加わっておいしくなるなどのメリットも発生し、一石二鳥であるとのお話がありました。
 最後に、伊藤先生より、パッククッキングを用いて実際にいろんな食材を用いて美味しい料理の練習を行ってもらいたいです。日本人の「災害時だから我慢して耐え忍ぶ」では、いつまでたっても日本の災害時の食文化が発展していかないので、災害時こそおいしく食べてもらえればと思っていますとのお話がありました。
 伊藤先生、遅くまで貴重なご講義ありがとうございました。
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