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お知らせ

「気持ちいい排便を目指して」~POOマスターの関わりを知ろう~

 6月の「医療と介護の未来塾」も、なるコミにおいて感染対策には十分注意しながら、ハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「気持ちいい排便を目指して」~POOマスターの関わりを知ろう~でした。講師は尾崎 美由紀 先生(幹在宅看護センター POOマスター 看護師)(以下、先生)からご講義いただきました。今月の参加者は、Zoom参加者:15名(最大)・なるコミ聴講:16名:合計31名でした。ご参加いただきました皆さま、有難うございました。

 今月も、イラスト画を用いながら、わかりやすくご講義いただきました。
 POOマスターとは、榊原千秋先生(保健師、助産師、看護師)が設立した民間認定資格です。適切な排便は生まれた時から亡くなるまで病気や障がいがあってもなくても、幸せに生きていくために必要なことで、その人らしさを取り戻すリカバリーケアでもあります。POOマスターは、排便のメカニズムとアセスメント方法を学び、排便ケアを実践し、気持ちよく出すことを叶えることが役目ですと説明していただきました。便失禁は約500万人、便秘治療の方は約1000万人と多く、難病やがん、脳血管疾患、寝たきり、認知症の方と関わる訪問看護においても、本人だけでなく介護者からも排泄トラブル相談にのることが多いそうです。先生より、これからの排便ケアは3日出なかったら下剤、寝たきりだから便秘など、固定観念や苦痛なケアから、誰もが自分で気持ちよく出す、尊厳を大事にしたケアへとパラダイムシフトしていきたいと話されました。便育についても説明していただきました。小さい子供は、うんちの絵本やおもちゃで遊び、いいバナナウンチが出た時は一緒に喜んであげることで、うんちすることが楽しみとなるようにしています。他にも「うんちはおてがみ(お手紙)」として大便:大きな便りが、カラダからの大切なサインであることを知ってもらうようにしています。さらに、赤ちゃんの腸内細菌について、約40%が生まれる時にお母さんからいただいたもの、その後3歳までに口にしたもので、どんな細菌が住みつくかが決まるため、便育はお母さんのお腹の中(生まれる前)から必要でありますと説明していただきました。
 うんちは、約70~80%が水分、残りは食べかすや生きた腸内細菌等で構成され、水分量で便の固さが決まってきますとのことでした。腸内細菌は、腸内に約1000種類、100兆個善玉菌、日和見菌、悪玉菌2:7:1の割合でわかれており、細菌の密接している様子が、まるでお花畑のように見えることから、「腸内フローラ」と呼ばれるようになりましたと説明がありました。腸内フローラのバランスが崩れる要因として、食生活の乱れ・運動不足・ストレス等を挙げられました。うんちになるまでについてご説明していただきました。胃で消化されて小腸に流れ込んだ時点で、約9ℓの水分量があり、その後、大腸では約2ℓの水分量、上行結腸~下行結腸をたどり固形化され直腸より便となって排出されます。胃に食べ物が入ると、大腸が脳にうんこを押し出してほしいとの信号が送られるそうです。先生も使用しているPOOマスターの「おまかせうんチッチの排便チェック表」を示され、排便周期や排便障害のタイプの現状を知ることで、ケアにつなげているそうです。
気持ちよくうんちするためには、①副交感神経優位、②おなかにいい食事、③腸の動き、④姿勢と排出の4つのポイントを紹介していただきました。
 ①副交感神経を優位にする生活リズとして、朝6~7時の朝日を浴びる、6時間以上の質の高い睡眠、バランスの良い食事、30分以上の軽い運動、音楽やアロマでリラックス、寝る前のストレッチ等があります。
 ②おなかにいい食事として、ヨーグルト・納豆・味噌等の有用菌を届ける働きのプロバイオティクスときのこ類・きゃべつ・ブロッコリー等の有用菌を育てる働きのプレバイオティクスの双方を組み合わせて、腸内環境改善にアプローチするシンバイオティクス注目されています。
 ③腸の動きとして、腹式呼吸や腹筋を使っての便秘体操、小豆ホットパックで腸を温めることが大切です。
 ④姿勢と排出では、実際の便器に座っている写真を用いてうんちポーズを示していただきました。かかとをあげて前かがみになり、つま先をみて、「はー」と大きく3秒間息を吐きます。前かがみの角度は約35度が理想であるとのことでした。麻痺の方で前かがみになりにくい場合は、車いすや歩行器にもたれることでできる場合もありますと示していただきました。
子どもの便秘の原因は、母乳・ミルク不足、多汗、偏った食事や食事の変化(離乳期)によって起こりやすく、排便を我慢することで便が硬くなり、排出する際に痛かった経験から再び我慢するという悪循環から起こります。成長発達、睡眠、集中力、学習、遊び、情緒にも影響してきますので注意してほしいとの説明がありました。
 女児と高齢者の事例を紹介していただきました。対象者は、5日間便が出ない・浣腸を行うが出ない・体調を崩し下痢便になる・便意がない・摘便後は下痢便になる等、それぞれ便について、本人・介護者がストレスを抱えていた事例でした。POOマスターとして、生活スタイル、薬剤等、排便チェック表を用いて便の排出周期や特性をアセスメントし、本人・家族に便育(食事・睡眠・保温・マッサージ・排出ケア)を行う関わりをもっていますとの話がありました。それぞれの状態に合わせて、主治医・PT・OT・歯科衛生士・デイサービス等多職種連携で取り組んでいることも理解できました。先生より、多職種の関わりにより、食事姿勢や内容について工夫を凝らしことで、3食べられるようになり、またマッサージやストレッチ・リハビリで腸を動かし、排便姿勢を整え排出ができました。食べて、出して、眠ることができ、家族を含めた生活が整うことができましたと説明がありました。
 今後、2024年6月から和歌山初のPOOマスター養成講習会が始まります。1病棟や1高齢者施設、1訪問看護ステーションにPOOマスターが配置でき、排泄に困らない和歌山市の未来を創って行きたいと話されました。
尾崎先生、貴重なご講義遅くまでありがとうございました。
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