今年最後の11月の未来塾も、なるコミにおいて感染対策には十分注意しながら、ハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「病院・施設・訪問看護で行った感染対策」。講師は、太田 岳志先生(訪問看護リハビリ手to手 管理者 特定・感染管理認定看護師)(以下、先生)からご講義いただきました。今月の参加者は、Zoom参加者:15名(最大)・なるコミ聴講:15名:合計30名でした。ご参加いただきました皆さま、有難うございました。
今月も、イラストやクイズを用いながらわかりやすくご講義いただきました。
まずは、感染対策のおさらいとして、全ての感染の内把握できている感染症の割合が5割以下であること、感染対策で最も重要である対策は、すべての患者の血液と汗を除いた体液(排泄物、分泌物、粘膜、創傷のある皮膚)を感染性として取り扱う標準予防策であるとの話がありました。手指消毒については、ポンプ式ノズルを最後まで押し切ることが1回分の量である。自己判断で量を判断しないことが大切であるとのことでした。また、イメージ動画として菌やウイルスに色付けを行い、どのようにして感染が伝播していくのかを分かりやすく示していただきました。間違った使用例として、手袋やエプロンのまま廊下をウロウロしたりパソコンに触れたりしてはならないイメージ写真もご紹介していただきました。やむを得ず手袋を着用してエレベーターに乗る際は肘で目的階ボタンを押してほしいとの説明がありました。次に重要な対策は、感染経路別の予防策を知ることであるとのことでした。感染経路として、①咳やくしゃみ等1~2m以内の至近距離で飛沫(直径0.5㎜以上)を浴びることで感染する飛沫感染、②直径0.5mm以下の飛沫核の粒子が空気中を浮遊し吸入することにより気道の粘膜から侵入し感染する空気感染、③皮膚や粘膜の直接的な接触や手・ドアノブ・手すり・便座・スイッチ・ボタン等の病原体に汚染された表面を介して感染する接触感染、④水蒸気にウイルスが付着し長く遠く浮遊するエアロゾル感染があるとのことでした。(0.0003ミリ)の粒子を95%補修するN95マスクについて、0.3ミクロンより小さいウイルスは補修できておらず、マスクをする意味がないのではと考えられがちであるが、マスクの着用が推奨されている理由として、唾液に含まれるウイルスを補修でき、周囲のウイルス暴露が減るためであるとのご説明がありました。
次に、労災病院での感染対策(発表許可済み)についてご紹介していただきました。
2020年2月COVID-19患者が和歌山県に初めて発生した翌日に、病院長を筆頭に各所属長を中心となり組織一丸となって対応するために「COVID-19対応プロジェクト」発足、発熱外来とCOVID病床の設置を行い、行政(県庁・保健所)との連携で多くの患者対応に尽力したそうです。また、院内定期便(院内メール)1回/日(10時)に配信し、刻々と変化する情報を職員全員に正しく提供されていたとのご説明がありました。さらに、院内だけでなく地域施設・企業にも正しい感染防止対策の知識と技術を理解してもらうために、感染管理認定看護師による出前講義や和歌山県行政や保健所からの依頼で中学・高校への出張PCRやクラスター発生病院に対してスタッフの派遣を行ったとの話がありました。労災病院内では、入院患者全員に徹底したマスク着用、院内面会禁止のポスター掲示と放送、委託業者の健康管理票、アルコールや体温測定器など様々な感染対策に気を配ったそうです。
さらに、和歌山県行政からの依頼で高齢者施設に指導訪問したお話を伺いました。感染症対策向上研修として、県内のICN(感染制御看護師)が2人組になって約50施設に指導訪問しラウンドチェックを行ったそうです。施設内環境やケア感染対策がどの程度行われているかのチェック表を用いて、最後の総評では、文章や写真を用いて、アドバイスや改善点共有することでより良い施設感染対策向上への指導を行ったとの話がありました。他にも、和歌山市保健所から訪問看護ステーションへの依頼として、COVID-19クラスター施設への派遣として、①患者の状態観察、②介護施設の対策指導にも尽力されたそうです。同様にラウンドチェックし、問題点を洗い出し直接指導をおこなったとの説明がありました。問題点としては、感染対策の基本(標準予防策)、手指消毒方法(量やタイミング)、PPEを脱ぐ方法、マスク使用等の理解不足。また隔離期間や環境整備等においても知識不足がみられ感染対策向上につなげるために直接指導を行ったとの話がありました。
そして、訪問看護として、在宅訪問する際の注意点やPPE脱着の動画を流していただきました。訪問前の確認事項として、利用者・家族に対して、体調確認・マスク着用のお願い・訪問前の喚起・PPEの着用場所の確認(自宅内は基本的にレッドゾーンのため、玄関前でPPEを装着することが望ましいが周囲の目を気にする家族もいるため)、訪問者に対して「持ち込んだものは出さない・不要なものは持ち込ませない」を原則として、(時計・指輪・名札等)身に着けているものは全て外す・持参するものは最小限する・長い髪はピンやゴムで束ねる等に注意してほしいとの話がありました。また、ウイルスは、自分の手を介して目や鼻、口から侵入しやすいため、自分の胸から上に手をも持っていかない、頻回に手指消毒を行う、脱衣の際にウイルスが付着しやすいため不要なものは身につけない等合わせてご講義いただきました。
最後に先生より、高齢者施設へ訪問することで、自室から出てくるため隔離できない、部屋食ができず食事中も会話する、マスクを食べたりする危険性があるためマスク着用ができない等、認知症や理解力の低下した方の対策の困難さを知る貴重な機会となった。また施設管理者が育成された施設ほど感染者数が少なく、改めて施設管理者の育成が必要であると感じたと話されました。
太田先生、貴重なご講義ありがとうございました。