5月8日より、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に引き下げられましたが、なるコミでは感染対策には十分配慮し、5月の未来塾(勉強会)をハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「がんの終末期に対するケアマネジメント」。講師は、木田 真紀 先生(トータルケアまきクリニック 院長)(以下、先生)からご講義いただきました。今月の参加者は、Zoom参加者:13(最大)・なるコミ聴講:20名:合計32名でした。ご参加された皆さま、有難うございました。
今月も、イラストを使用しながらご講義していただきました。
ケママネジャーに対し、「終末期がん患者の担当を避けたいか」に関する比較データー(原田ら、日本プライマリ・ケア連合学会誌2016)を紹介されました。結果として、経験年数では5年以上、勤務形態では非常勤勤務、基礎資格では医療職の方のパーセンテージ(%)が多く示されていることが分かりました。多くのケアマネジャーが困難感や不安感を訴えているが、要因としては、急変時の対応・他職種との連携からくる問題・時間を問わない24 時間体制での支援の必要性・在宅療養を支える他職種チーム内でのマネジメン力が問われてくるためではないかと論文では書かれているとの紹介がありました。終末期がん患者さんのマネジメントする上で、「いつものパターンが通用しない」理由として、①通常の場合と目標が異なる、②病状変化のスピードが早く、プランの見直し頻度が高い、③苦痛(身体・精神)にどう対応していいのかわからない、④病状の予測と準備ができない、⑤医療系多職種との連携が難しい等が考えられるのではとのご説明がありました。ケアマネジャー次第で、在宅療養するがん患者様の生活の質は決まるのか?の問いに対し、先生は「YES」と感じており、自宅で幸せに暮らし、安らかな最期を迎えるためにはケアマネジャーの力が非常に必要になってくると感じているとの話しがありました。
日本人とがん関係についてご説明していただきました。
▶約100万人(比較:和歌山の人口約90万人)ががんと診断され、死因の第1位で約4万人が亡くなっていること。
▶罹患数では大腸が最多、死亡数は肺が最多である。また、男性の罹患率1位は前立腺がんであるが、死亡数の順位には含まれていないのは、進行が緩徐であること。
▶がんの5年生存率は64%。診断割合:男性( 65.5% )女性( 51.2% )で約2人に1人、死亡割合は、男性( 26.2% )女性( 17.7% )であるとのことでした。
緩和ケア病棟入院患者死亡6 週間前の日常生活動作の経時的変化について、グラフを用いて示していただきました。階段昇降、移動がまずできなくなり、食事や排尿・排便意は自立されている方が多い。また、認知機能も最後(意識がもうろうとなる)まで保持されている。が、2週間前より食事、移動および認知機能は急激に低下する方が多いことが理解できました。先生より、先行きを見通しながらケアプラン構築が必要であり、例として福祉用具の設置やポータブルトイレの必要性等、また変更申請のタイミングを逃さないことである。医療と介護の連携により、多職種でのディスカッションで「今、何が起こっているか」を把握することが重要あるとの話がありました。
がんの病状変化の7つのフェーズ(市橋ら「がん患者のケアマネジメント」)を紹介して頂きました。1.在宅準備期(依頼~開始前日)~7.グリーフケアに分かれており、どのタイミングで何をサポートするのかをまとめたものでした。例えば、1.在宅準備期(依頼~開始前日)のでは、患者・家族への思いを聞く。必要な福祉用具を設置等、3.生活再建期(1週間~変化まで)では、○○に行きたい等やりたいことへのサポート。4.病状変化期(変化~3週間まで)では、状態が急に変化することを想定し、必要に応じケアプランの変更等について多職種でカンファレンス、6.看取り後期(最後の1週間)では、家族に寄り添う。会いたい人に会っていただくことが想定されるとのことでした。先生より、7つのフェーズにあてはめて80代と50代の方の2事例をご紹介いただきました。先生のクリニックでは、厚生労働省が推奨するフリーアプリケーションの「Medical Care Station(MCS)」を用いてリアルタイムでの支援の状況報告により、支援者同士の連携図っている話がありました。また、福祉関連でもよく使われるアウトリーチ(手をさしのべる)について、「在宅医療」、「がん末期患者」にも生活の質を担保するために「必要なもの・困っていることは何か」を引き出し、支援を行っていく必要であると感じているとのことでした。
最後に、先生より、最期の時間を大切にすごしていただくためには、「日常的なサポート」が重要であり、それにより「医療介入」・「精神的なサポート」・「家族のサポート」等の様々な介入のタイミングの時期や方法も自ずと見えてくる。また、多くの終末期がん患者が「日常生活動作を最期まで自立して行う」ことを要望しており、残された時間をその人らしく生活できること、死を迎える恐怖の中でいかに幸福感を高められるかに繋げていくためには、医療と介護が在宅チームとしてしっかり連携・協力しサポートしていくことが本当に大切であるとの話がありました。
木田 真紀 先生、遅くまでありがとうございました。